シネマヴェーラ渋谷

近日上映予定

あなたは猪俣勝人を知っているか
2022/01/22 ～ 2022/02/04

猪俣勝人（1911 - 1979）
　東京出身だが、検事の父の転任で各地を転々とする。学業を嫌い文学を愛し、中3にして新聞の長編小説募集に応募した。日大芸術学部卒業後、『九州日報』の短編小説賞で１位となり、1934年に松竹蒲田撮影所に脚本家研究生として入社。最初の脚本は清水宏『双心臓』。他にも『おんなの暦』『男性対女性』などで注目されるが、オリジナル脚本が重視されないことに幻滅、1942年に松竹を退社した。
　戦後、シナリオ・ライターは監督や会社に従属せず作家として独立すべきとしてシナリオ文芸協会を設立。当時監督業に進出した佐分利信とコンビを組んで、『執行猶予』『あゝ青春』『風雪二十年』を世に送り、また渋谷実監督の『現代人』のシナリオを手掛けた。
　後に自身も監督業に乗り出し、1958年『荒城の月』でデビュー。翌年、迷宮入りになったスチュワーデス殺害事件を描いた意欲作『殺されたスチュワーデス白か黒か』を発表するが、カトリック教会からの批判などで公開が短期に終わった。その後はテレビドラマの脚本を多く執筆し、また母校の日大芸術学部の教壇に立った。映画評論家として知られた田山力哉は従弟であり、共著がある。

特別上映▶『青色革命』『まごころの花ひらく女給』協力：国立映画アーカイブ
料金：1200円均一／ポイント鑑賞不可

＊『殺されたスチュワーデス白か黒か』は最大限の修復を施しておりますが、お見苦しい点が多少ありますことをご承知おきください。
＊『廣場の孤獨』は元素材の関係上、画像・音声共にお見苦しい点が多々ありますことをご承知おきください。
＊『黒い傷あとのブルース』はカラー作品ですが、褪色が進んでいたため白黒に修復しました。

上映予定作品一覧（全15本）

『荒城の月』

『性と幸福』

『城ヶ島の雨』

『殺されたスチュワーデス　白か黒か』

『廣場の孤獨』

『朝霧』

『愛は降る星のかなたに』

『火の鳥』

『花くれないに』

『怒涛の兄弟』

『炎の氷河』

『大東京誕生　大江戸の鐘』

『黒い傷あとのブルース』

『青色革命』

『まごころの花ひらく　女給』

『荒城の月（71分／16mm）』
上映スケジュール
公開：1958年
監督：猪俣勝人
出演：石浜朗、近藤宏、重森孝、村瀬幸子、山田百合子
「荒城の月」「箱根山」などで知られる若き天才作曲家・滝廉太郎は、ドイツ留学から半年後、病いに冒され故郷に戻るが…。二十六歳の短い生涯を交響曲のため捧げた廉太郎の姿と、互いへの思いにもかかわらず別れる運命になる幼馴染の菊枝との恋を美しい自然の中に描いた抒情的作品。

『性と幸福（20分／16mm）』
上映スケジュール
公開：1950年
監督：岩堀喜久男
猪俣勝人の盟友でもある佐分利信監督『女性対男性』の併映作として公開された夫婦生活における妊娠や避妊などの家族計画を指南した大人向けの性教育短編映画。猪俣の脚本は医学的な解説に終始せず劇映画的な見せ場も用意。

『城ヶ島の雨（76分／16mm）』
上映スケジュール
公開：1959年
監督：猪俣勝人
出演：山田真二、瀬木俊一、重森孝、森今日子、野口ふみえ、藤田進
三浦・三崎の観光バスガイド志津子と大学生の恭一は将来を誓う仲。ところが世は就職氷河期。就職に失敗した恭一は三崎に戻り、モダンな新婚生活を夢みる志津子とケンカになるが…。大学の同級生たちの友情、東京に憧れる地方の女子の心理、そして一番大切なものに気づく若い恋人たち。城ヶ島が見える美しい海を背景に描かれる爽やかな青春物語。

『殺されたスチュワーデス　白か黒か（122分／デジタル）』
上映スケジュール
公開：1959年
監督：猪俣勝人
出演：久保菜穂子、田宮二郎、左幸子、根上淳、笠智衆、田宮二郎
中禅寺湖畔で国際線スチュワーデス若月綾子の薬殺死体が発見された。捜査本部は彼女が信者だった教会のダニエル修道士にターゲットを絞るが、彼は突然帰国し…。実際の未解決事件を犯罪に至る経過から犯行まで微に入り細に入り描いた問題作！封切り直後に約30分カットされた短縮版しか現存しないと思われていたが、完全版が発見されフィルム修復を経て公開以来の上映にこぎつけた。

『廣場の孤獨（107分／デジタル）』
上映スケジュール
公開：1953年
監督：佐分利信
出演：佐分利信、津島恵子、菅佐原英一、高杉早苗、千田是也、津島恵子
スターリン死去の報に沸く冷戦下の日本に、動乱利権屋のティルピッツが入国し、右翼と左翼の衝突を画策。その暗躍に、日産新報外信部副部長の原口（佐分利）と妻が巻き込まれ…。原作者の堀田善衛、武田泰淳、社会党書記長の片山哲など、多くの政治家、文化人も出演し、佐分利の監督としての格を見せつけた社会派大作。冒頭15分ほど画面と音声の乱れが続きますことをご了承の上、ご覧ください。

『朝霧（94分／35mm）』
上映スケジュール
公開：1955年
監督：丸山誠治
出演：久保明、岡田茉莉子、山田真二、青山京子、杉葉子、江原達怡、志村喬
東京で働く姉彰子の仕送りで信州松本の大学で寮生活を送る晋一、彼は亡父の友人で彰子の勤め先の社長でもある倉賀と姉の関係に疑念を抱き思い悩むが、芸鼓に売られて行くりんご農園の少女、その少女を愛する親友、晋一を慕う倉賀の娘ら彼を取り巻く人々との交流の中、やがて姉の愛情の深さにも気がついてゆく。終盤の岡田茉莉子の笑顔が美しい。
©TOHO CO.,LTD.

『愛は降る星のかなたに（94分／デジタル）』
上映スケジュール
公開：1956年
監督：斎藤武市
出演：森雅之、山根寿子、浅丘ルリ子、高田敏江、小園蓉子、香月美奈子、金子信雄
昭和16年、ソ連のスパイ容疑で森がつかまった。妻の山根は夫を信じ娘と共に健気に待つが…。ゾルゲ事件で死刑になった尾崎秀実をモデルに、戦争とは、国家とはを問う。尾崎は共産主義を信じ日本の帝国主義を打倒するためスパイとなったが、結果的にはソ連に自分の親族を殺され、時代の中で翻弄される。
©日活

『火の鳥（99分／デジタル）』
上映スケジュール
公開：1956年
監督：井上梅次
出演：月丘夢路、伊達信、三橋達也、仲代達矢、中原早苗、山岡久乃、大坂志郎、植村謙二郎、金子信雄
劇団のスター・エミが映画に進出、主演作『火の鳥』の相手役に新人の敬一を抜擢する。二人は愛人関係になるが、映画出演を劇団から批判され、敬一にも利用されたことを知り…。仲代達矢のデビュー作でもある。中原早苗、三橋達也、山岡久乃、大坂志郎、金子信雄ら芸達者な役者に囲まれながら、超美貌の女優を堂々と演じるは今年生誕百年を迎える月丘夢路。監督の井上梅次と公開翌年に結婚することになる。
©日活

『花くれないに（102分／35mm）』
上映スケジュール
公開：1957年
監督：田畠恒男
出演：高橋貞二、小山明子、笠智衆、菅佐原英一、夏川静江、勝間典子、杉田弘子、夏川静江、清川新吾
ラジオドラマの映画化作品で、1950年代後半の岩手県にやってきた新任教師が閉鎖的な利権主義を打ち破ろうと奮闘する青春ドラマ。東北版“坊ちゃん”と言われた。主演の高橋貞二＆小山明子に加え、笠智衆、夏川静江、中村是好、須賀不二男、渡辺篤が脇を固め、デビューし立ての桑野みゆきの高校生役も爽やか。
©1957松竹株式会社

『怒涛の兄弟（79分／デジタル）』
上映スケジュール
公開：1957年
監督：志村敏夫
出演：中山昭二、前田通子、松本朝夫、三ツ矢歌子、花岡菊子、林寬、沢井三郎、岬洋二、菊地双三郎、芝田新、九重京司、石川冷
公安捜査課長の兄中山昭二と知らずの内に麻薬密輸組織に取り込まれる弟松本朝夫、そして二人を見守る母花岡菊子の深き慈愛。新東宝お得意の麻薬犯罪組織モノに母モノをミックスした異色作。犯罪組織のバックに思想活動家のグループを配する辺りは社会派猪俣勝人のこだわりか！？
©国際放映

『炎の氷河（107分／35mm）』
上映スケジュール
公開：1957年
監督：穂積利昌
出演：杉田弘子、川喜多雄二、明石潮、高橋貞二、柳永二郎、水上令子、伊吹友木子、坂本武、河上富江、中川弘子、斎藤達雄、多々良純、野村浩三、山形勲、北竜二、新島勉、片山明彦、朝丘雪路、川口のぶ、竹田法一、井上正彦
研修医の敦子の父が自殺した。その原因が恋人の父親の謀略と知り復讐を誓った敦子は…。女を捨てたヒロインの執念を描く復讐譚。島倉千代子の主題歌と親友のバレリーナが躍る「白鳥の湖」の不思議な共存。山形勲、坂本武、斎藤達雄、多々良純、朝丘雪路など脇も豪華。結末は驚愕必至！
©1957松竹株式会社

『大東京誕生　大江戸の鐘（117分／35ｍｍ）』
上映スケジュール
公開：1958年
監督：大曾根辰夫
出演：高田浩吉、瑳峨三智子、高千穂ひづる、松本錦四郎、松本幸四郎
戊辰戦争から江戸城明け渡しまでを小栗上野介を中心に描く。いよいよ薩長が江戸に迫るが、将軍慶喜には戦争をする気がなく、勝海舟も和平派。幕府の命運は小栗上野介に託された。松本幸四郎、高田浩吉、瑳峨三智子、新珠三千代、高千穂ひづる、山田五十鈴、島田正吾、森美樹、芥川比呂志とスター勢揃いの時代劇大作。
©1958松竹株式会社

『黒い傷あとのブルース（81分／デジタル）』
上映スケジュール
公開：1961年
監督：小野田嘉幹
出演：牧真史、島崎雪子、竜崎一郎、月田昌也、殿山泰司
羽田空港に降り立った男に向けられるライフル、そして彼を待つ謎の女…。国際的麻薬密売組織に属する男と組織を裏切って利益を独り占めしようとする男の対決を描くピカレスクもの。6本しか存在しない大宝作品の1本。ライバル同士の男女が恋に落ちるのはお定まりだが、所詮結ばれるはずもない二人が迎えるラストが哀しい。

『青色革命（107分／35mm）』
上映スケジュール
公開：1953年
監督：市川崑
出演：千田是也、沢村貞子、太刀川洋一、江原達怡、久慈あさみ、三國連太郎
元歴史教授と周囲の人々のドタバタを描く。オネエっぽい三國連太郎、誠実な千田是也、颯爽とした久慈あさみ、久慈にご執心の伊藤雄之助、飄々とした妻・沢村貞子。プロレタリアにブルジョアにアカ…。石川達三の新聞小説を猪俣勝人が脚色した和製スクリューボールコメディーで、夫をたらしこむ料亭の女将・小暮実千代と情夫の加東大介も最高！
©TOHO.CO.,LTD

『まごころの花ひらく　女給（105分／35mm）』
上映スケジュール
公開：1955年
監督：千葉泰樹
出演：杉葉子、英百合子、伊藤久哉、越路吹雪、設楽幸嗣、森雅之、鶴実千子、藤田淑子、三條雅也、徳大寺伸、星美智子、上原健
同僚との結婚資金のため銀座のバーで女給アルバイトを始めた順子(杉葉子)。自分は堕落しないと高を括った順子が常連の社長に純潔を奪われ、自暴自棄になっていく過程が描かれると同時に、シングル・マザーの女給・澄江(越路吹雪)の妻子ある男との恋を絡めて描く。結婚や生活費のため女給になった二人の女の決断とは!? ラスト、同僚から「順子ちゃんも立派な女給ね」と言われた杉葉子の肝の据わった表情が素晴らしい。千葉泰樹と猪俣勝人による傑作
©東映

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2022/01/22 ～ 2022/02/04

上映予定作品一覧（全15本）

『荒城の月（71分／16mm）』

『性と幸福（20分／16mm）』

『城ヶ島の雨（76分／16mm）』

『殺されたスチュワーデス 白か黒か（122分／デジタル）』

『廣場の孤獨（107分／デジタル）』

『朝霧（94分／35mm）』

『愛は降る星のかなたに（94分／デジタル）』

『火の鳥（99分／デジタル）』

『花くれないに（102分／35mm）』

『怒涛の兄弟（79分／デジタル）』

『炎の氷河（107分／35mm）』

『大東京誕生 大江戸の鐘（117分／35ｍｍ）』

『黒い傷あとのブルース（81分／デジタル）』

『青色革命（107分／35mm）』

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