近日上映予定
追悼特集 成澤昌茂 映画渡世
2021/07/10 ~ 2021/07/30
成澤昌茂(1925-2021)
長野県生まれ。中学卒業後、溝口健二監督の内弟子となり監督の自宅から日大芸術学部に通う。43年、京都溝口家に移り松竹撮影所で『名刀美女丸』などの助監督を務める。翌年、学徒出陣で従軍、捕虜生活を経て復員した。
48年、シナリオ『毒婦』が川口松太郎大映専務に認められ契約。『馬喰一代』(51)でシナリオ賞受賞。『雁』(53)の脚本がヴェネチアで高く評価された。その後も『明治一代女』(55)、『赤線地帯』(56)、『いとはん物語』(57)、『風と女と旅鴉』(58)ほかの傑作を執筆。『浪花の恋の物語』(59)でシナリオ賞を受賞。『宮本武蔵』(61)、『はだかっ子』(61)、『関の彌太ッぺ』(63)と次々と巨匠と組んで名脚本を書き続けた。
62年、監督に転出。『裸体』『四畳半物語 娼婦しの』『花札渡世』『雪夫人繪圖』『妾二十一人 ど助平一代』の5作品を残した。
黎明期からラジオ、テレビドラマの脚本・演出を手掛けていたが、75年以上は舞台の脚本と演出に専念し、映画・テレビの依頼を絶っていた。近年、監督作が注目されると共に名脚本家としての評価が始まっている。
上映予定作品一覧(全18本)
『風と女と旅鴉』
『浪花の恋の物語』
『はだかっ子』
『裸体』
『妾二十一人 ど助平一代』
『浅草紅団』
『噂の女』
『かも』
『花札渡世』
『黒蜥蝪』
『雪夫人繪圖』
『午前零時の出獄』
『明治一代女』
『母と娘』
『関の彌太ッぺ』
『おんなの渦と淵と流れ』
『四畳半物語 娼婦しの』
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『馬喰一代(113分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1951年
監督:木村恵吾/共同脚本:成澤昌茂
出演:三船敏郎、京マチ子、志村喬、市川春代、菅井一郎、杉狂児、星光、潮万太郎、左卜全、小杉義男、伊庭輝夫
“北海の虎”と異名をとる馬喰の三船は酒と賭博に明け暮れ、妻を病死させてしまう。心を入れ替え馬を買った三船は…。三船の面倒を見る酌婦・京マチ子や高利貸・志村喬も良いが、不器用だが心から息子を思う父親という異色の役を演じた三船が圧巻。奇跡の競馬とラストシーンには感涙必至。
©KADOKAWA1951
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『風と女と旅鴉(90分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1958年
監督:加藤泰/脚本:成澤昌茂
出演:中村錦之助、三國連太郎、長谷川裕見子、丘さとみ、薄田研二、殿山泰司、加藤嘉、進藤英太郎、上田吉次郎
二枚目半の軽薄な渡世人・錦之助と足を洗ったやくざ者・三國連太郎が旅の途中で出会い…。キャスティングの妙とローアングルで撮られたチャンバラ、そして俳優がノーメイクと加藤泰らしさ満載の傑作。果し合いの後、斬られた進藤英太郎がいつまでもヒクヒクと痙攣しているのも可笑しい。
©東映
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『浪花の恋の物語(105分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1959年
監督:内田吐夢/脚色:成澤昌茂
出演:有馬稲子、中村錦之助、田中絹代、花園ひろみ、大崎四郎、疋田圀男、白木みのる、江崎ひで子、尾形伸之介、進藤英太郎、中村芳子、浪花千栄子、片岡千恵蔵
大店の養子・中村錦之助と遊女・有馬稲子の恋の顛末を、原作者の近松門左衛門を狂言回しとして描く。浄瑠璃人形のように美しい二人の激しい恋は、現実の前では夢のように儚く哀しい。様式美の中に斬新さを取り入れた内田吐夢渾身の傑作!
©東映
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『はだかっ子(146分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1961年
監督:田坂具隆/脚色:成澤昌茂
出演:藤敏孝、木暮実千代、三國連太郎、小宮光江、有馬稲子、東野英治郎、大鐘光子、八代万智子、桜井基男、打越正八、山本緑、木村英世、近衛秀子、中西一夫
父を戦争で亡くした少年を中心に、周囲の人々が助け合いながら貧しさを乗り越えていく姿を描く人間ドラマの傑作。見え隠れする戦争の影、狭山基地やユネスコ村の描写が、観るものに戦争の愚かさを強く訴えかける。有馬稲子が少年の担任の先生役で出演。
©東映
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『裸体(85分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1962年
監督:成澤昌茂
出演:瑳峨三智子、川津祐介、進藤英太郎、山田五十鈴、千秋実、杉浦直樹、長門裕之、菅井一郎、浦辺粂子、飯田蝶子、坊屋三郎、松尾和子、菅井きん、稲川善一
次々に男たちの愛人になる瑳峨は、「あたいみたいに芸術的な身体をしていると、沢山お金が入ってくる」とうそぶくが…。秘密クラブの女将役の山田五十鈴を始めとする豪華な出演陣と、カッコいい映像による風俗映画の傑作。瑳峨が存分に下着姿を披露し、銭湯シーンでは下宿屋のおばちゃん・浪花千栄子の裸体も一瞬登場!
©1962松竹株式会社
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『妾二十一人 ど助平一代(90分/デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1969年
監督:成澤昌茂
出演:三木のり平、佐久間良子、森光子、中村玉緒、橘ますみ、城野ゆき、浦辺粂子
支店を妾に経営させ産ませた子供は30人。実在した精力絶倫牛鍋屋を三木のり平が演じる。中村玉緒と森光子がいがみ合い、橘ますみと城野ゆきが浮気にいそしむ中、暗躍する浦辺粂子とダークホースの佐久間良子。そこへ、主人死亡の知らせが!原題『あかさたな』を岡田茂が変更。それを聞いた佐久間が号泣、映画界を去るきっかけになったという曰くつきの作品。興行的には岡田の思惑通り大ヒットした。
©東映
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『浅草紅団(86分/デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1952年
監督:久松静児/脚本:成澤昌茂
出演:京マチ子、乙羽信子、根上淳、岡譲二、河村黎吉、若杉紀英子、潮万太郎、宮崎準、杉狂児
戦前浅草のモダニズムを描いた川端原作を戦後に置き換え、見事な風俗映画に仕上げた成澤の筆が冴える。女剣劇の座長・京マチ子、レビュー劇団員の乙羽信子、根上淳を中心に物語は展開するが、浮浪者、娼婦、ポン引き、踊子、見世物小屋等、美と醜が混在する大震災後の浅草も興味深い。
©KADOKAWA1952
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『噂の女(84分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1954年
監督:溝口健二/脚本:依田義賢、成澤昌茂
出演:田中絹代、大谷友右衛門、久我美子、進藤英太郎、浪花千栄子、峰幸子、阿井三千子、橘公子、小柳圭子、若杉曜子、長谷川照容、大美輝子、前田和子、田中春男、見明凡太郎、十朱久雄、伊達三郎、上田寛
置屋の娘という理由で失恋し、自殺を図ったあげく実家に戻った久我。母(田中絹代)に商売をやめるよう懇願するが、母の頭は愛人で頭がいっぱい。店で働く太夫たちの日本髪着物姿と、東京帰りの久我の現代的な服装とショートカット。くっきりとした対比が、世代や価値観の違いを際立たせる。島原の置屋のセットも凄い。
©KADOKAWA1954
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『かも(81分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1965年
監督:関川秀雄/脚本:成澤昌茂
出演:梅宮辰夫、緑魔子、大原麗子、北原しげみ、原知佐子、蜷川幸雄
梅宮辰夫が女たちから金を吸い上げる“夜の青春シリーズ”第四弾。夜の世界に引きずり込まれる緑魔子や大原麗子、内縁の妻・原知佐子ら女たちの逞しさと美しさ、仲沢半次郎の手持ちカメラによる臨場感溢れる映像が素晴らしい傑作。
©東映
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『花札渡世(93分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1967年
監督:成澤昌茂
出演:梅宮辰夫、鰐淵晴子、城野ゆき、小林千登勢、伴淳三郎、安部徹、西村晃、沢村貞子、植田灯孝、須賀良、六本木真、北川恵一、佐藤汎彦、田川恒夫、浦辺粂子、日尾孝司、桐島好夫、高須準之助、斎藤力、萩原正勝
軍靴の響きが近づく時代、親分に煮え湯を飲まされた梅宮辰夫は“仁義は死んだ”ことを骨身にしみて知る…。ヒロイン・鰐淵晴子と悪女・小林千登勢、いかさま賭博師・伴淳、悪徳刑事・西村晃と、モダンかつリアルな人物造形が素晴らしい。画面構成にアートとノワールの香り漂う成澤昌茂監督&梅宮辰夫の最高傑作!
©東映
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『黒蜥蝪(87分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1968年
監督:深作欣二/脚色:成澤昌茂
出演:丸山明宏、木村功、川津裕介、宇佐美淳也、松岡きっこ、西村晃、小林トシ子
1億円の宝石「エジプトの星」をめぐる女賊・黒蜥蜴と名探偵・明智の華麗なる駆け引き。そして互いに魅かれ合う二人の行く先は!? 深作・成澤・丸山明宏が化学反応を引き起こした怪作で。タランティーノのオーレン・イシイのモデルは丸山だという。人間剥製コレクションの中に三島由紀夫がいるのも一興。
©1968松竹株式会社
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『雪夫人繪圖(91分/デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1968年
監督:成澤昌茂
出演:佐久間良子、山形勲、浜木綿子、丹波哲郎、谷隼人、長谷川澄子、北あけみ
舟橋聖一原作を師匠・溝口に続いて映画化。精神と肉体に引き裂かれる人間としての雪夫人・木暮実千代。対して成澤の雪夫人は、人形のように美しく華族の亡霊のように虚ろな佐久間良子。素晴らしい自然と鮮やかな色彩もご覧あれ。お蔵入りの末に、何故か日活歌謡映画『襟裳岬』の併映作品として75年に公開されるも興行的には惨敗した問題作。
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『午前零時の出獄(84分/デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1950年
監督:小石栄一/脚本:成澤昌茂
出演:岡田英次、久我美子、宇野重吉、笠智衆、荒川さつき、三島雅夫
組の仕返しを避けようと午前零時に出所したヤクザの岡田英次は、幼馴染の久我美子に助けられ堅気になろうとするが…。執拗な追跡から逃げ続けながら愛を育む二人と、彼らを助けようと奔走する新聞記者・宇野重吉。島田一男原作の事件記者もので、岡田を軽々と投げまくる刑務所長・笠智衆も見もの。
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『明治一代女(111分/デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1955年
監督:伊藤大輔/共同脚本:成澤昌茂
出演:木暮実千代、北上弥太郎、田崎潤、杉村春子、藤木の実、市川小太夫、殿山泰司、浦辺粂子、高堂国典
歌舞伎役者と恋仲の芸者・木暮実千代は、襲名披露のための金を田崎潤から引き出そうとするが…。憎き女将・杉村春子の存在が木暮の情念を更に燃え上がらせ、吹き荒ぶ風の中で男と女の意地がぶつかる。木暮と田崎の立ち回りを流麗な移動撮影の素晴らしさ。和製ノワールの傑作!
©国際放映
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『母と娘(86分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1961年
監督:川頭義郎/脚本:成澤昌茂
出演:鰐淵晴子、佐々木功、佐分利信、月丘夢路、佐野周二、安住譲、城山順子、浦辺粂子
月丘夢路が偶然出会った少女(鰐淵晴子)は過去に捨てた娘だった、というご都合主義からシリアスな母娘ものに展開していく成澤らしい女性映画。鰐淵に翻弄される佐野周二、河原の虫を売る(!?)苦学生・佐々木功、そして父・佐分利信と助演陣が完璧。かつての夫婦の佐分利と月丘の再会シーンでのカメラの切り返しの素晴らしさ!
©1961松竹株式会社
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『関の彌太ッぺ(89分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1963年
監督:山下耕作/脚本:成澤昌茂
出演:中村錦之助、木村功、十朱幸代、上木三津子、大坂志郎、夏川静江、武内亨
「瞼の母」の長谷川伸の同名小説を映画化した股旅ものの大傑作。祭りの晩にはぐれた8つの妹を探し、流れ流れた長い旅。ドスを片手に意地と情けに葛藤する渡世人の10年の歳月を錦之助が熱演する。仇討の時を告げる六つの鐘、放り投げられる三度笠。山下耕作の非凡な演出が冴えわたる。
©東映
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『おんなの渦と淵と流れ(116分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1964年
監督:中平康/脚本:成澤昌茂
出演:仲谷昇、稲野和子、雨宮節子、北村和夫、巌金四郎、加藤武、神山繁、二階堂郁夫、楠侑子、庄司永建、沢村貞子、川地民夫、標滋賀子、谷口香、下条正巳、三樹高雄、雪丘恵介、小沢昭一、藤村有弘
英文学者の夫は、妻が友人を誘惑するのを目撃。やがて終戦を迎え、小料理屋を始めた妻は…。潔癖でプライドが高い夫を仲谷昇、身体の中の官能の水に流されるように生きる妻を中平康の性のミューズ・稲野和子が演じる。モノローグの多用、横いっぱいに使われた構図、戦中から戦後へと移りゆく時代構成に中平の手腕が冴える。
©日活
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『四畳半物語 娼婦しの(90分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1966年
監督:成澤昌茂
出演:三田佳子、野川由美子、田村高廣、露口茂、三島ゆり子、遠藤辰雄、岡崎二朗、木暮実千代、佐藤綾子、進藤英太郎、浦辺粂子、唐沢民賢、五十嵐義弘、那須伸太朗、中村時之介、東野英治郎
薄倖の娼婦と零落した旗本の恋を情感豊かに描いた東映文芸女性映画の白眉。モダンなタイトルや音楽、クレーンによる長回し撮影が荷風の世界と融合した一作。儚く美しい三田佳子に加え、逞しい妹分の野川由美子、金が全ての女将・木暮実千代、夫を寝取られた浦辺粂子など芸達者の女優陣が魅せる。
©東映
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