近日上映予定
追悼特集 来るべき吉田喜重
2023/06/17 ~ 2023/07/07
吉田喜重(よしだ・よししげ)1933 – 2022
福井市生まれ。東大仏文を卒業後、松竹に入社。木下惠介などの助監督を経て、1960年『ろくでなし』で監督デビュー。1964年に岡田茉莉子と結婚。同年『日本脱出』のラストを無断でカットされたため松竹を退社。1966年に岡田と現代映画社を設立した。「反メロドラマ」「日本近代批判三部作」の後、『美の美』などのテレビドキュメンタリー番組を製作。1986年『人間の約束』により映画に復帰した。2008年、パリのポンピドゥ・センターで回顧上映が行われるなど国際的評価に高い。
芸術選奨文部大臣賞を受賞した著書『小津安二郎の反映画』、小説『贖罪 ナチス副総統ルドルフ・ヘスの戦争』など著作も多数。また、オペラの演出をするなど多才な芸術家であった。
■料金(各回入替制)
一般:1300円/シニア:1100円/会員:900円/学生:700円
トーク付上映:均一料金1700円(ポイント鑑賞不可)
チラシデザイン:山本アマネ
上映予定作品一覧(全22本)
『甘い夜の果て』
『秋津温泉』
『嵐を呼ぶ十八人』
『人間の約束』
『嵐が丘』
『血は渇いてる』
『水で書かれた物語』
『女のみづうみ』
『炎と女』
『告白的女優論』
『戒厳令』
『鏡の女たち』
『日本脱出』
『情炎』
『樹氷のよろめき』
『さらば夏の光』
『エロス+虐殺』
『煉獄エロイカ』
『夢のシネマ 東京の夢 明治の日本を映像に記録したエトランジェ ガブリエル・ヴェール』
『知の開放 知の冒険 知の祝祭 東京大学 学問の過去・現在・未来』
『映画監督とは何か』
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『ろくでなし(88分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1960年
監督:吉田喜重
出演:津川雅彦、高千穂ひづる、川津祐介、山下洵一郎、安井昌二、渡辺文雄、三島雅夫、佐藤慶
ブルジョアの息子と彼にたかる4人の大学生が、退屈まぎれに危険な遊戯に手を染める。60年代安保を背景に、早くも退廃的でシラケた若者像を描いている。数か月違いで公開されたゴダール『勝手にしやがれ』との類似が話題になった鮮烈なデビュー作。ラスト、よろめき歩く津川雅彦と丸の内オフィス街が最高にクール。
©1960松竹株式会社
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『甘い夜の果て(85分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1961年
監督:吉田喜重
出演:津川雅彦、山上輝世、瑳峨三智子、滝沢修、杉田弘子
女を利用して上流社会に近づこうとする美貌の青年を津川雅彦が演じる日本版『赤と黒』。金と肉体と憎しみによって津川と運命的に結びつくバーのマダム・瑳峨の悪女ぶりが素晴らしい。階層社会の光と陰、一人の青年の野心と挫折をカッコいい音楽に乗せて描いた松竹ヌーヴェルヴァーグの一本。
©1961松竹株式会社
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『秋津温泉(112分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1962年
監督:吉田喜重
出演:岡田茉莉子、長門裕之、芳村真理、清川虹子、東野英治郎、山村聡、高橋とよ
戦中に結核療養で奥深い温泉宿にやって来た文学青年が娘に出会うが…。敗戦後、会社員になり家庭を持ちながら時折訪ねてくる男と、無為に過ごした岡田茉莉子の17年。その非対称な立場がラストに転換する。岡田茉莉子出演作100本記念に自ら企画を立ち上げた作品で、ロングでとらえた四季の美しさ、「秋津荘」という空間の見事さに引き込まれる一作。
©1961松竹株式会社
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『嵐を呼ぶ十八人(108分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1963年
監督:吉田喜重
出演:早川保、香山美子、殿山泰司、平尾昌章、三原葉子、根岸明美
瀬戸内の造船所の下請けで働く十八人の少年は、博打や喧嘩で寮監の手を煩わせていた。夏祭りの日、暴行事件が起こり…。当時の労働者映画への批判的試みとして、高度成長社会の底辺である“労働者”以下の存在を冷めた視点で描く。十八人が登場するさいのパンや乱闘シーンの移動撮影など素晴らしい撮影に圧倒される傑作。
©1963松竹株式会社
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『人間の約束(124分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1986年
監督:吉田喜重
出演:三國連太郎、村瀬幸子、河原崎長一郎、佐藤オリエ、杉本哲太、武田久美子、若山富三郎
東京の新興住宅地の会社員宅。寝たきりの祖母タツが死に夫が殺害を自供するが、刑事は疑いを持ち…。鏡や水面を通したショット、フレーム外から聞こえる死を請う声、痴呆が進むタツに振り回される家族の誰もが、その死を望み始める無残。細野晴臣の不安を誘う音楽も素晴らしい鮮烈な一作。
©現代映画社
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『嵐が丘(132分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1988年
監督:吉田喜重
出演:松田優作、田中裕子、名高達郎、石田えり、萩原流行、伊東景衣子、志垣太郎、今福将雄、高部知子、古尾谷雅人、三國連太郎
火の神を祭る山部一族の当主・高丸は、都から鬼丸という異様な容貌の少年を連れ帰る。鬼丸はやがて高丸の娘・絹と愛し合い…。舞台を中世日本に置き換え、出自に翻弄される人間の狂気の愛とエロスを描く。能や舞踏を取り入れつつ、荒涼とした風景の中で演じる松田優作と田中裕子が素晴らしい。
©KADOKAWA1988
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『血は渇いてる(87分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1960年
監督:吉田喜重
出演:佐田啓二、三上真一郎、芳村真理、岩崎加根子、織田政雄、佐野浅
リストラされた男が抗議の自殺をするが未遂に終わる。それをきっかけに彼は脚光を浴びるが、保険会社やマスコミに利用されることで自身の人格をも失っていく。「安易に氾濫するヒューマニズムを逆手に、その欺瞞を描いた」という第2作。ラストの目のカットが強烈。
©1960松竹株式会社
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『水で書かれた物語(120分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1965年
監督:吉田喜重
出演:岡田茉莉子、浅丘ルリ子、弓恵子、入江保則、山形勲、岸田森、桑山正一
松竹を離れた吉田の日活作品。地元の有力者・橋本の娘と婚約した静雄は、母と橋本の関係を疑い…。近親相姦という題材のため石坂洋次郎が映画化不可能と語った小説の映画化。白の絣の着物と白い日傘が印象的な美しい母の背徳。キスや裸身が情欲をかりたてることなく観念的に描かれる挑発的な作品。
©日活
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『女のみづうみ(102分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1966年
監督:吉田喜重
出演:岡田茉莉子、芦田伸介、露口茂、早川保、夏圭子、益田愛子
宮子は自分の裸体を愛人に撮影させたが、そのフィルムを暴漢に奪われ、以後見知らぬ男の脅迫を受けるようになる。川端康成の『みづうみ』を自由に翻案しサスペンスタッチで人妻の不安を描きながら、虚像と実像の関係、加害者と被害者の間の共犯関係に鋭くメスを入れた。現代映画社制作の記念すべき第1作。
©1966松竹株式会社
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『炎と女(101分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1967年
監督:吉田喜重
出演:岡田茉莉子、木村功、小川真由美、日下武史、細川俊之、北村和夫
伊吹と立子と人工授精によって生まれた子供、そして精子の提供者・坂口とその妻。“人工授精”というテーマを導入することで近代家族の問題を鋭く提示する。精子提供者夫婦を家に招いては子供を“自分のもの”だと言い募る木村功の神経症的演技が光る。ミッドセンチュリーモダンな邸宅や別荘を映し出す斬新なカメラワーク、シュールな音楽も素晴らしい。
©1967松竹株式会社
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『告白的女優論(126分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1971年
監督:吉田喜重
出演:浅丘ルリ子、有馬稲子、岡田茉莉子、三國連太郎、木村功、月丘夢路
撮影開始を2日後に控えた映画『告白的女優論』で共演する3人のスター女優は、それぞれ密かな不安を抱えていた。岡田茉莉子、有馬稲子、浅丘ルリ子を競演させ、映画スターとは何かというテーマを追求する。これは衰退しつつある映画界への離別と称賛の歌でもある。
©現代映画社
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『戒厳令(111分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1973年
監督:吉田喜重
出演:三國連太郎、松村康世、三宅康夫、倉野章子、菅野忠彦、飯沼慧、内藤武敏、辻萬長、八木昌子
「殺る前に、10数える」。二・二六事件の首謀者として処刑された北一輝を追及した作品。三國連太郎演じる北に対して無名の兵士Aを対置させた脚本は別役実によるもの。『エロス+虐殺』『煉獄エロイカ』とともに日本近代批判三部作を形成する。極端なローアングル、グラス越しの顔、左の空間を開けた階段…。細部まで設計された画面構成が北の先鋭化する精神状態を表現している。
©1973東宝
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『鏡の女たち(129分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:2003年
監督:吉田喜重
出演:岡田茉莉子、田中好子、一色紗英、室田日出男、山本未来、北村有起哉、三條美紀、犬塚弘、西岡徳馬
娘の夏来を置き去りにして24年前に失踪した美和を探しつづける母の愛。しかし愛が美和らしき女性を見つけ出したとき、彼女は記憶を失っていた。『嵐が丘』以来15年ぶりの映画作品であり、三世代の女性たちを通して広島の原爆問題を浮かび上がらせる。
©現代映画社
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『日本脱出(96分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1964年
監督:吉田喜重
出演:鈴木やすし、待田京介、内田良平、坂本スミ子、桑野みゆき、市原悦子
金庫破り、逃走、密輸船潜伏、そして…。街が東京オリンピックで賑わう頃、孤独と焦燥を抱きながら日本脱出に賭ける男がいた。「アクションを純粋に追求し、思わぬ異次元へと飛躍する」という監督の意図に反しラストが無断でカットされた作品。主人公がジャズ歌手を夢見るという設定を生かした武満の曲がカッコイイ。
©1964松竹株式会社
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『情炎(97分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1967年
監督:吉田喜重
出演:岡田茉莉子、木村功、高橋悦史、菅野忠彦、太地喜和子、南美江
破綻した結婚生活を送る織子。彼女は亡き母の恋人だった能登に惹かれながらも、名も知らぬ労務者と関係を持つ。それはかつての母の行為と同じものだった。抑圧された環境から脱出しようとする妻と、心の底に潜む性の欲望を鮮やかに描く。
©1967松竹株式会社
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『樹氷のよろめき(98分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1968年
監督:吉田喜重
出演:岡田茉莉子、木村功、蜷川幸雄、赤座美代子
美容院を経営する百合子は恋人と別れるつもりで最後の旅に出る。別れを告げた百合子は元の恋人が住む室蘭に向かうが…。妊娠した女と若い男と昔の恋人という3人が繰り広げるカオスな厳寒の旅。肉体、嫉妬、過去と現在を池野成の印象的な音楽にのせて描いた吉田の反メロドラマ。
©1968松竹株式会社
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『さらば夏の光(96分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1968年
監督:吉田喜重
出演:岡田茉莉子、横内正、ポール・ボーベ、エレーヌ・スビエル
欧州7カ国で撮られたロードムービー。日本を忘れるため異郷を旅する女と、古びた写生画に描かれたカテドラルを探す建築家の男。男の夢と女の過去が出会うとき、そこに立ち現れたのは、忘れられた地名「長崎」だった。アラン・レネを思わせる映像に溢れた一作。日本航空の欧州就航記念映画で製作費が限られているため、岡田茉莉子自らメイクをし衣装(森英恵による)にアイロンがけしたという逸話がある。
©現代映画社
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『エロス+虐殺(167分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1970年
監督:吉田喜重
出演:細川俊之、岡田茉莉子、楠侑子、高橋悦史、八木昌子、稲野和子、原田大二郎、川辺久造
アナキスト大杉栄は自由恋愛を提唱し、妻以外の女たちと関係するが…。過去の大杉らと現代の若者たちを対比させつつ、自由と権力、個人と国家、女と男のはざまを描く吉田の代表作。男性的なるものの否定と母性のイメージが虐殺の一瞬へと収斂する。人物を画面の下か横に配置する怖いほど計算されつくされた構図が素晴らしい。
©現代映画社
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『煉獄エロイカ(117分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1970年
監督:吉田喜重
出演:岡田茉莉子、鴨田貝造、木村菜穂、牧田吉明、岩崎加根子、武内亨、筒井和美
レーザー光線研究者の男と妻の元に“娘”だと名乗る少女が現れる。男には前衛党に属し武力革命を目指した過去があり…。過去・現在・未来を交差させつつ、政治を語り愛を語る。横に分割するフレーム、人物を画面の下端に置く構図、不気味な音、森英恵の衣装。全てがスタイリッシュ。
©現代映画社
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『夢のシネマ 東京の夢 明治の日本を映像に記録したエトランジェ ガブリエル・ヴェール(51分/デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1995年
監督:吉田喜重
出演:ピエール=イヴ・フェルナンディ、メラニー・ヴォデヌ、高橋明
映画生誕100年を記念して放映された作品。リュミエール社から派遣され明治の日本を撮影したガブリエル・ヴェールの足跡を思索した映像エッセイ。ドキュメンタリーというよりはむしろ、ヴェールが残した映像や文章から触発された吉田の映画の根源を探る思想が映し出されてゆく。
©Jean Douchet
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『知の開放 知の冒険 知の祝祭 東京大学 学問の過去・現在・未来(59分/デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1997年
監督:吉田喜重
出演:林田一高、岡寛恵、林秀樹、鈴木弘秋
蓮實重彦が東大総長就任の際に制作された大学PR作品。本郷キャンパスにある“三四郎池”の名前の由来である漱石の『三四郎』と、現代の大学空間が複雑に交錯する。様々な映画的手法とテーマがちりばめられ、日傘の女の謎めいた微笑みが観る者を奇妙な世界に誘う。
©東京大学
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『映画監督とは何か Kijû Yoshida: qu'est-ce qu'un cinéaste?(52分/デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:2008年
監督:ニコラ・リポシュ
出演:吉田喜重、岡田茉莉子、蓮實重彦、青山真治、ジャン・ドゥーシュ、シャルル・テッソン
吉田喜重が自ら語る生い立ちから松竹時代、反メロドラマの時代、性と政治の時代。そして『美の美』演出の後いったん映画を離れて再び映画に復帰する、その半生。加えて岡田茉莉子、蓮實重彦、青山真治らによって吉田映画の神髄が語られる。黄色の落ち葉に彩られた神宮外苑を共に歩く吉田喜重と岡田茉莉子の姿が美しい。
©Carlotta Films
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東京都渋谷区円山町1‐5
KINOHAUS(キノハウス) 4F
03-3461-7703
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