近日上映予定
「ハリウッドのルル」刊行記念 宿命の女 ルイズ・ブルックス
2023/04/08 ~ 2023/04/21
ルイズ・ブルックス(Louise Brooks, 1906 - 1985)
バイブル・ベルトであるカンザス州に生まれ、高校を中退してダンスの道に進むが舞踏団の規律に従えず断念。1925年『或る乞食の話』で映画デビュー。ホークスの『港々に女あり』をきっかけにパプストにドイツへ招かれ『パンドラの箱』のヒロイン・ルル役を演じた。この作品によって、ラングロワの「ディートリッヒ、ガルボさえも霞んでしまう。ただ、ルイズ・ブルックスだけがそこにいる」という言葉通り神話的存在になった。
17本のサイレント映画と8本のトーキーに出演した後、1938年に映画界を引退し、故郷でダンス教室を開くが失敗。仕事を転々とし、後には崇拝者達からの援助で暮らしていたが、50年代のフランスでの発見がアメリカでの再評価につながった。晩年はジョージ・イーストマン・ハウスのキュレーターの助けを得て映画についてのエッセイを書くようになり、『ハリウッドのルル』を出版しベストセラーとなった。彼女はショーペンハウエルやプルーストに耽溺する読書家だったが、その知識と人間観察力が花開いた一冊である。
仕事でもプライベートでも自由奔放、言葉も辛辣で気難しく、2度の結婚も破綻した。性的にリベラルであり、恋人がいてもアヴァンチュールが絶えなかった。9歳で性的虐待を受けたとき、母親は彼女がそう仕向けたと非難したという。幼くして、後に彼女が演じた無邪気な悪女(意図せず周りの人間を堕落させ破滅させる)だと決めつけられたことは深い傷を残したに違いない。しかし、ブルックスは自由と本を何よりも愛した一人の人間だった。本特集ではブルックス出演作と『ハリウッドのルル』で取り上げられた作品、映画人の作品を上映する。
上映予定作品一覧(全15本)
『チョビ髯大将』
『港々に女あり』
『人生の乞食』
『パンドラの箱』
『淪落の女の日記』
『ミス・ヨーロッパ』
『風』
『嘆きの天使』
『三文オペラ』
『牝犬』
『化石の森』
『愛の勝利』
『スカーレット・ストリート』
『悪魔の往く町』
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『百貨店 Love'Em and Leave'Em(65分/サイレント/デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1926年
監督:フランク・タトル
出演:エヴリン・ブレント、ルイズ・ブルックス、オスグッド・パーキンス、ローレンス・グレイ、マーシャ・ハリス
NYの百貨店で働くシッカリ者の姉と奔放な妹。罪の意識もなく上司を手玉にとり、姉の婚約者をも篭絡する妹を演じる当時20才のブルックス!仮装舞踏会での見事なチャールストン、ウソ泣き、ロールスロイスで去っていくラストでの晴れ晴れとした笑顔が鮮烈な印象を残す。
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『チョビ髯大将 It’s the Old Army Game(76分/サイレント/デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1926年
監督:エドワード・サザランド
出演:ルイズ・ブルックス、W・C・フィールズ、ウィリアム・ギャクストン、ブランチ・リング
自分勝手な家族と住民たちに悩まされているドラッグストアの主人・フィールズが、NYの土地販売の宣伝を手伝うことになり…。当時の大スター・フィールズより、店の看板娘ブルックスの圧倒的可愛さが際立つ。監督のサザーランドとブルックスは本作をきっかけに結婚するが、2年もたたないうちに離婚した。
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『港々に女あり A Girl in Every Port(78分/サイレント/デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1928年
監督:ハワード・ホークス
出演:ヴィクター・マクラグレン、ロバート・アームストロング、ルイズ・ブルックス、マリア・カサジュアナ、ドロシー・マシューズ、エレナ・フラード、フランシス・マクドナルド、グレテル・ヨルツ、リーラ・ハイアムス
二人の船乗りが空中サーカスの飛び込み嬢を巡って…。殴り合い、笑い合い、タバコの火をつけ合う気のいい男たちの熱い友情は、魅惑の女ブルックスをめぐって壊れてしまうのか!? ホークス無声映画時代の傑作で、パプストは本作を観て彼女こそ『パンドラの箱』のヒロインだと確信したという。
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『人生の乞食 Beggars of Life(83分/サイレント/デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1928年
監督:ウィリアム・ウェルマン
出演:ウォーレス・ビアリー、ルイズ・ブルックス、リチャード・アーレン
虐待され養父を殺してしまった娘の逃避行を描いたロード・ムーヴィー。ホーボーたちとのすったもんだや、警察との手に汗握る攻防など見どころ満載。お尋ね者になったブルックスの超チャーミングな男装姿は、ディートリッヒやガルボの先駆けでもある。代表作のひとつと言える作品だが、相手役のリチャード・アーレンとは非常に仲が悪かったという。
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『パンドラの箱 Die Büchse der Pandora(130分/サイレント/デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1929年
監督:G・W・パプスト
出演:ルイズ・ブルックス、フリッツ・コルトナー、フランツ・レデラー、カール・ゲーツ
ヴェデキントの小説の映画化に当たり、パプストがルイズ・ブルックスをハリウッドから呼び寄せ、二人にとっての代表作となった傑作。無邪気で奔放なルルに魅入られた男女が勝手に破滅していく。結婚、殺人、裁判、逃亡、そして底辺まで落ちたルルを待ち受ける驚愕のラスト。ブルックス本人はそれを「彼女の幼いころからの夢がかなった」瞬間だと述べている。ドイツで修復された130分版。
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『淪落の女の日記 Das Tagebuch einer Verlorenen(111分/サイレント/デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1929年
監督:G・W・パプスト
出演:ルイズ・ブルックス、フリッツ・ラスプ、アーノルド・コルフ、ヨゼフ・ロヴェンスキー、アンドレ・ロアンヌ、アンドルース・エンゲルマ、ヴァレスカ・ゲルト、エディット・マインハルト、アンドルーズ・エンゲルマン、ヴァレスカ・ゲルト
薬局の娘が父親の助手に誘惑され妊娠。子供と引き離され自分は感化院に入れられる。『パンドラの箱』に続くパプスト&ブルックスのコンビ作で、ラストはパプストの意に反したものだったという。しかし、この作品は男が守らない倫理規範を女に押し付ける社会を批判的に描いた紛れもないフェミニズム映画であり、無力だったルルが過酷な現実を生き抜き女同士の連帯を示す展開は感動的。
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『ミス・ヨーロッパ Prix de beauté/Beauty Prize(88分/デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1930年
監督:アウグスト・ジェニーナ
出演:ルイズ・ブルックス、ジョルジュ・シャルリア、ジャン・ブラダン、アウグスト・バンディーニ、ガストン・ジャック
新聞社のタイピスト・ルルは軽い気持ちでミスコンに写真を送りミス・ヨーロッパに選ばれる。ルルが男に見られることを嫌う恋人は、彼女を家庭に縛り付けるが…。貴族からマハラジャまで夢中になるルルの魅力が溢れる。キラキラした世界に惹かれる恋人への男の非難と憎しみが、現代のモラハラやストーキングにも通じる一作。監督を降りたルネ・クレールもブルックスを主役にと望んでいた。
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『風 The Wind(74分/サイレント/デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1928年
監督:ヴィクトル・シェストレム
出演:リリアン・ギッシュ、ラルス・ハンソン、モンタギュー・ラヴ、ドロシー・カミング、エドワード・アール
スカボローの原作を見つけて映画化にこぎつけ、シェストレムを監督に、ガルボと共演したラルス・ハンソンを相手役に選んだギッシュ。出来上がった作品は有無を言わさぬ傑作だが、公開直前にラストを差し替えざるを得なくなる。『ハリウッドのルル』では偉大な俳優・映画人のギッシュがスタジオから排除されていく過程が書かれている。今回、ギッシュのコメント付きで上映。ギッシュの言葉からは分かりにくいが、本編はラストがハッピーエンドに差し替えられたヴァージョンである。
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『嘆きの天使 Der Blaue Engel(95分/16mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1930年
監督:ジョセフ・フォン・スタンバーグ
出演:エミール・ヤニングス、マレーネ・ディートリッヒ、カート・ゲロン、ローザ・ヴァレッティ、ハンス・アルバート、ラインホールド・ベルント
高校の老教師が生徒から取り上げたキャバレー“嘆きの天使”の踊り子のブロマイドに魅せられ…。大ヒットしたディートリッヒ&スタンバーグの黄金コンビ初作品で、哀しく苦しいストーリーの中に人間の滑稽さや歓びを織り込んだ名作。『パンドラの箱』と並ぶ悪女映画の古典と言われ、実際ブルックスが引き受けなければ『パンドラの箱』のヒロインはディートリッヒになっていた。
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『三文オペラ Die 3 Groschen-Oper(110分/デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1931年
監督:G・W・パプスト
出演:ルドルフ・フォルスター、カローラ・ネイベル、ラインホルト・シュンツェル、フリッツ・ラスプ、ヴァレスカ・ゲルト、ロッテ・レーニヤ、ウラジミール・ソコロフ
ドイツの劇作家ブレヒトの戯曲を映画化したトーキー最初期の音楽劇。クルト・ヴァイルの印象的なメロディと猥雑な歌詞が、荒んだ時代の雰囲気をスクリーンに横溢させる。「マック・ザ・ナイフ」のように陽気なギャングのボス・メッキ―と乞食の元締めが肥え太るロンドンをドイツ語で蘇らせたパプストの手腕を観よ。
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『牝犬 La Chienne(96分/デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1931年
監督:ジャン・ルノワール
出演:ミシェル・シモン、ジャニー・マレーズ、ジョルジュ・フラマン、ロジェ・ガイヤール
冴えない経理係と若い女とヒモ。人形劇で3人が紹介され「この映画には教訓なんてない」と言い放つ。感傷を廃した冷徹な人間観察、奥行きを生かした構図、流麗なカメラが素晴らしい傑作。人を食ったラストは『素晴らしき放浪者』を予感させる。ブルックスにインスパイアされたルノワールは愛人役をリュリュと名付けたが、ミシェル・シモンが実際にリュリュ役の女優に恋したというのは、まさに“事実は小説より奇なり”。
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『化石の森 The Petrified Forest(82分/デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1936年
監督:アーチー・L・メイヨ
出演:レスリー・ハワード、ベティ・デイヴィス、ディック・フォラン、ハンフリー・ボガート、ジュヌヴィエーヴ・トビン、チャーリー・グレープウィン、ポーター・ホール
逃亡中の犯人に乗っ取られた砂漠の真ん中のガソリンスタンドで展開するサスペンス。演劇の映画化にあたって、レスリー・ハワードが舞台に出ていたボギーの起用を条件に出演した。映画界ではパッとしなかったボギーが遅咲きの花を咲かせた一作で、ブルックスも著書で言及している。基本的に会話劇で、コワモテのボギーら悪党らが繰り広げる無駄口がタランティーノっぽい。
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『愛の勝利 Dark Victory(104分/デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1939年
監督:エドマンド・グールディング
出演:ベティ・デイヴィス、ジョージ・ブレント、ハンフリー・ボガート、ロナルド・レーガン、ジェラルディン・フィッツジェラルド、ヘンリー・トラヴァース
大富豪の父の遺産で楽しく暮らすジョディは体に不調を覚え、医師・スティールの診察を受けるが…。限りある命を知って初めて、生きる意味を求めるジョディをデイヴィスが熱演。オスカー主演女優賞を受賞した難病ものの古典。『ハリウッドのルル』で巨匠であり愉快な人物として描かれるグールディングの作品で、ベティ・デイヴィスも最も気に入っていると語ったという一作。
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『スカーレット・ストリート Scarlet Street(102分/デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1945年
監督:フリッツ・ラング
出演:エドワード・G・ロビンソン、ジョーン・ベネット、ダン・デュリエ、マーガレット・リンゼイ、ロザリンド・イヴァン、ジェス・バーカー、チャールズ・ケンパー、ウラジミール・ソコロフ
妻に頭の上がらない銀行員が偶然女優の卵を助け…。若く美しい悪女によって運命を狂わされる実直な中年男エドワード・G・ロビンソンが鬼気迫る演技を見せる悪夢のようなフィルム・ノワール。ルノワール『牝犬』のリメイクで、効果的な音響や陰影に富んだ照明にフリッツ・ラングの才能が如何なく発揮された傑作。だが、ルノワールはこの作品を気に入っていなかったという。
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『悪魔の往く町 Nightmare Alley(112分/デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1947年
監督:エドマンド・グールディング
出演:タイロン・パワー、ジョーン・ブロンデル、コーリン・グレイ、ヘレン・ウォーカー、マイク・マズルキ
見世物小屋の客引きが仲間からインチキ読心術の秘密を聞き出し、妻と組んで興行を始めるが…。不安を煽る陰影と緊迫感溢れる音楽、そして暗い見世物小屋から上流階級へと駆け上がり、また暗闇へと転落していく詐欺師を演じたタイロン・パワーが素晴らしい。昨年、ギレルモ・デル・トロによってリメイクされた。
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