近日上映予定
ウクライナの大地から
2022/06/04 ~ 2022/06/17
アレクサンドル・ドヴジェンコ
エイゼンシュテイン、プドフキンと並ぶ三大巨匠。1894年ウクライナの農家に生まれ物理学の教師となる。1926年からオデッサの撮影所で監督として活動を開始。『大地』は史上最高の無声映画のひとつと言われるが、りんごに喜びを感じる瀕死の老人の長いアップなどがソ連当局から「敗北主義」と批判され再編集を余儀なくされた。映画大学でも教鞭をとり、多くの教え子を送りだした。死後、その栄誉を称えてキーウ映画撮影所がドヴジェンコ・フィルム・スタジオに改称された。
グリゴーリ・チュフライ
1921年ウクライナ生まれ。第二次大戦では最前線で戦い、三度も負傷した。その経験は彼の映画に深い影響を与え、戦争の悲惨さを伝える作品を作り続けた。それらの作品は海外でも高い評価を受けた。
ロラン・ブイコフ
1929年ウクライナのキーウ生まれ。モスクワ大学学生劇場を経て、58年レニングラードの劇場の主任演出家となる。この間に映画界へデビューし、『道中の点検』や『死者からの手紙』等100本を越える作品に出演。監督作品の代表作はヒホン国際映画祭金賞等を受賞した『がんばれかめさん』。
キラ・ムラートワ
1934年ルーマニア生まれの映画監督、脚本家、女優。主にオデッサのスタジオで作品を撮ったが、社会主義リアリズムの規範に従わない特異性が当局の批判を買い、数年単位で現場から締め出された。キーウのドヴジェンコ・フィルム・スタジオに移り、20世紀後半以降は国際的に評価が高まった。1988年に仏国際女性映画祭で初の全作品回顧上映が催され、NYのリンカーン・センターが2005年に回顧上映会、2013年にはロッテルダム国際映画祭が全作品上映会を催した。
ラリーサ・エフィモヴナ・シェピチコ
1938年ウクライナ生まれ。大学でドヴジェンコに師事した。1977年、自身が監督をつとめた『処刑の丘』がベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞。1979年、小説『マチョーラとの別れ』の映画化のためのロケハンの際に自動車事故により死去。同作はその後、夫であり映画監督であるエレム・クリモフが『別れ』として完成させた。
ロマン・バラヤン
1941年アゼルバイジャン生まれのウクライナ=アルメニア人の監督。映画学校卒業後、ウクライナで働き始めた。パラジャーノフの弟子で、現在もウクライナに住んでいる。ロシアのウクライナ侵攻を非難し、ロシア映画の国際映画祭への出品に反対している。
コンスタンチン・ロプシャンスキー
1947年ウクライナ生まれ。音楽大学院出身で音楽評論でも優れた功績を挙げている。高等監督コースを終了後、タルコフスキー監督の『ストーカー』の助手に付いた。長篇第一作となる『死者からの手紙』は14もの国際映画賞を受賞。ストルガツキーがシナリオに参加した傑作である。現在、ロシア映画人から戦争の即時終結を求める声明が出ていているが、ロプシャンスキーもそれに署名している。
*収益の一部をUNHCRに寄付します
*6/8(水)-6/10(金)は空調工事のため休館
*チケットは、上映当日の朝10時30分より劇場窓口にて販売いたします
上映予定作品一覧(全10本)
『女狙撃兵マリュートカ』
『誓いの休暇』
『がんばれかめさん』
『長い見送り』
『処刑の丘』
『君たちのことは忘れない』
『猟人日記“狼”』
『灰色の石の中で』
『死者からの手紙』
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『大地(87分/35mm/サイレント)』
- 上映スケジュール
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公開:1930年
監督:アレクサンドル・ドヴジェンコ
出演:セミョーン・スヴァシェンコ、ユーリア・ソーンツェワ、ステバン・ジュクラート
オープニングの波打つ草原のショットからラストの雨に濡れる果物のイメージまで、風に靡く小麦、熟したリンゴ、雲から差し込む陽光など美しいカットが続く史上最高の無声映画のひとつ。ウクライナの大地と群集の動的な力強さが素晴らしく、映画学校で教材として使われる傑作。
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『女狙撃兵マリュートカ(90分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1956年
監督:グリゴーリ・チュフライ
出演:イゾルダ・イズヴィツカヤ、オレグ・ストリジェーノフ、ニコライ・クリューチコフ
革命内戦の最中。赤軍の女狙撃兵・マリュートカが捕虜の白軍中尉を護送中に船が難破し、2人は孤島にたどりつくが…。イデオロギーや身分の差を越えた愛の素晴らしさと、戦争の不条理を訴えたヒューマニズム溢れる佳作。『石の花』で有名なアグファカラーによる、砂漠や海の映像の目を見張るような美しさは必見。
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『誓いの休暇(87分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1959年
監督:グリゴーリ・チュフライ
出演:ウラジミール・イワショフ、ジャンナ・プロホレンコ、アントニーナ・マクシーモア
戦場で偶然たてた手柄の褒美に、6日間の休暇をもらった少年兵のアリョーシャ。2日もあれば母の待つ故郷に帰れたはずが…。帰郷に心躍らせる少年の健気さ、やっと会えた息子を戦場に送り返さなければならない母の苦しみが、戦争の不条理と残酷さを浮かび上がらせる。宮崎駿監督もお気に入りだという、反戦映画の名作。
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『がんばれかめさん(86分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1970年
監督:ロラン・ブイコフ
出演:アリョーシャ・エルショフ、アンドレイ・サモトルキン、ミーシャ・マルティロシャン、アレクセイ・バターロフ、リリヤ・マルキーナ、イリーナ・アゼル
中学1年の生物係の2人がカメの耐久力を調べるうちに実験がエスカレート、ついに戦車まで!? 児童映画を多く撮った監督の演出力はキアロスタミ級。子供たちの自由で自然な演技が素晴らしく、かつて子供だったすべての人の心を揺さぶる作品。オシャレなタイトルバックや巧みなカット割りも見もの。
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『長い見送り(93分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1971年
監督:キラ・ムラートワ
出演:ジナイーダ・シャルコ、オレーグ・ウラディミルスキー、ユーリー・カユーロフ、タチアナ・ムィチコ
神経症的なシングルマザーと、母から逃れたい思春期の息子の母子愛憎映画。白黒のコントラスト、揺れ動く心情そのもののようなカメラが素晴らしい傑作だが、内容が問題視され公開されなかった。ヌーヴェルヴァーグやニューシネマの影響が色濃く、斬新なカットや音の使い方など、ムラートワ特有の映像スタイルが光る。終盤の長回しも素晴らしい。
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『処刑の丘(109分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1976年
監督:ラリーサ・エフィモヴナ・シェピチコ
出演:ボリス・プロートニコフ、ウラジーミル・ゴスチューヒン、アナトリー・ソロニーツィン
1942年冬。雪深い山に逃げ込んだパルチザンがドイツ軍に捕まり…。現実主義者と理想主義者の二人のパルチザンと、ドイツの協力者となった元教師の審問官。三人の異なるキャラクターが絡まり合い凄絶なラストへとつながる。ほとんどがクローズアップで、人物達の顔が素晴らしい。シェピチコは本作でベルリン金熊賞を受賞するも41歳の若さで事故死した。
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『君たちのことは忘れない(130分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1977年
監督:グリゴーリ・チュフライ
出演:ノンナ・モルジュコーワ、ワジーム・スプリドノフ、アンドレイ・ニコラエフ、ワレンティナ・テリーチキナ
第2次大戦で夫を失い長男の行方も知れない農婦が、次男を死んだことにして匿うが…。『誓いの休暇』の監督が同じく戦争による母親と息子の悲劇を描いた名作。黄金色に輝く麦畑と戦争の終りを告げる炎のシーンが忘れがたい。軍当局の指示で上映中止となり、海外へ出すことも禁じられたという作品。
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『猟人日記“狼”(75分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1977年
監督:ロマン・バラヤン
出演:ミハイル・ゴルボヴィチ、オレーグ・タバコフ
領主の森を守るため、貧しい農奴であっても容放しない森番の物語。 “ビリューク(一匹狼)”と呼ばれる孤高の森番の造形が素晴らしい。セリフを極力排し、森の豊かな自然音に雄弁に語らせる。妻に去られ娘二人を世話する男やもめの侘しさが濃密に漂う。ツルゲーネフの短篇の映画化で、パラジャーノフによって絶賛された傑作。
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『灰色の石の中で(86分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1983年
監督:キラ・ムラートワ
出演:イーゴリ・シャラーポフ、スタニスラフ・ゴヴォルーヒン、オクサーナ・シラパク、ロマン・レフチェンコ
愛する妻を亡くした判事は息子を顧みようとせず…。お坊ちゃまと廃墟に住む兄妹の冒険譚。徹底的に貧富の差を描き政治を批判したせいか、当局により一部カットを余儀なくされた。浮浪者の妹が同じセリフを繰り返す狂気もホラーで、後期ゲルマンを思わせるカオス的世界が広がっている。1988年、本作はカンヌの「ある視点部門」上映作に選ばれた。
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『死者からの手紙(87分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1986年
監督:コンスタンチン・ロプシャンスキー
出演:ロラン・ブイコフ、イオシフ・ルィクリン、ヴィクトル・ミハイロフ
ミスの積み重ねから起きた核戦争後の世界を描く。監督はタルコフスキーの系譜を継ぐロプシャンスキー。脚本にSF作家のストルガツキーが参加している。荒廃した世界の美しさや、生き残った子供たちと老科学者がひっそりと暮らすシェルターの描写が詩的かつ感動的。ディストピア好きにはたまらない傑作。核爆発の特撮の凄いSF大作にして反戦映画。
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