近日上映予定
日本の映画音楽家Ⅰ 武満徹
2022/03/26 ~ 2022/04/15
武満徹[1930-1996]
ほとんど独学で音楽を学び、のちに若手芸術家集団「実験工房」に所属し、映画やテレビなどで幅広く前衛的な音楽活動を展開。和楽器を取り入れた「ノヴェンバー・ステップス」によって、日本を代表する現代音楽家となった。
若い頃から映画を深く愛し、年間に数百本の映画を新たに見ることもあった。羽仁進『不良少年』(1961年、第16回毎日映画コンクール音楽賞受賞)、小林正樹『切腹』(1962年、第17回毎日映画コンクール音楽賞受賞)、勅使河原宏『砂の女』(1964年、第19回毎日映画コンクール音楽賞受賞)、『他人の顔』(1966年、第21回毎日映画コンクール音楽賞受賞)などの映画音楽を手がけ、いずれも高い評価を得ている。ヴィクトル・エリセの映画『エル・スール』を絶賛しているほか、アンドレイ・タルコフスキーに深く傾倒し、タルコフスキーが1986年に他界すると、その死を悼んで弦楽合奏曲「ノスタルジア」を作曲している。
特別上映▶『おとし穴』『砂の女』『他人の顔』
一般:1400円/シニア:1200円/会員:1000円/学生:800円
※ポイント鑑賞不可
※すべてのチケットは上映当日の朝10:30より受付で販売いたします。オンライン予約や前売は行っておりませんので、ご了承くださいませ。
上映予定作品一覧(全22本)
『乾いた湖』
『彼女と彼』
『日本脱出』
『乱れ雲』
『からみ合い』
『自動車泥棒』
『あこがれ』
『青幻記 遠い日の母は美しく』
『火まつり』
『女体』
『最後の審判』
『めぐりあい』
『日本の青春』
『弾痕』
『おとし穴』
『砂の女』
『他人の顔』
『白い朝』
『京』
『氣 BREATHING』
『熱海ブルース』
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『土砂降り(105分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1957年
監督:中村登
出演:沢村貞子、岡田茉莉子、山村聰、佐田啓二、桑野みゆき、田浦正巳、三谷幸子、日守新一、野辺かほる、高橋トヨ、峰久子、水上令子、川口のぶ、稲川善一、末永功、春日千里
偶に家にやってくる父を囲んで華やぐ母と3人の子供。しかし実は妾である母が経営する連れ込み宿の一角だと分かると、にわかに不穏な空気が醸成される。娘の岡田茉莉子の婚約破棄をきっかけに、人々が一挙に破滅へと突き進む反家族映画の傑作。線路沿いの連れ込み宿に響く電車の音、岡田が勤めるキャバレーの音楽、そして激しく降る雨など現実音を効果的に使った音響が素晴らしい。英語字幕版での上映。
©1957松竹株式会社
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『乾いた湖(88分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1960年
監督:篠田正浩
出演:三上真一郎、岩下志麻、炎加世子、山下洵一郎、高千穂ひづる、小坂一也、伊藤雄之助、鳳八千代、高野真二、沢村貞子、九條映子、富永ユキ、国景子、竹田公彦、林洋介、水島弘、田中晋二、清宮貴夫、寺山修司、春山勉
60年安保時代。闘争にも遊びにも熱中できず、シラケや虚無を抱えて逸脱していく若者の姿を描く。脚本の寺山修司、タイトルの和田誠、音楽の武満と新しい才能が集まった松竹ヌーヴェルヴァーグの一本。篠田と武満のコンビ第一作で、詩の朗読に重ねられるブルース、ジャズなど新しい試みに満ちている。
©1960松竹株式会社
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『彼女と彼(107分/デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1963年
監督:羽仁進
出演:左幸子、岡田英次、山下菊二、長谷川明男、五十嵐まりこ、堀越節子、市田ひろみ、穂積隆信、蜷川幸雄
新興団地に住む主婦が、隣接するバタ屋部落の火事をきっかけに部落の男に引き込まれていく。羽仁進の問題意識が見事に結実した傑作。オープニングとエンディングでは谷川俊太郎作詞の曲が使われており、トランペットのソロに加えて、空き缶や金属音はプリペアド・ピアノで作られている。
資料提供:岩波映像株式会社/記録映画保存センター
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『日本脱出(96分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1964年
監督:吉田喜重
出演:鈴木やすし、待田京介、内田良平、坂本スミ子、桑野みゆき
街が東京オリンピックで賑わう頃、孤独と焦燥を抱きながら日本脱出に賭ける男。金庫破り、逃走、密輸船潜伏、そして…。「アクションを純粋に追求し、思わぬ異次元へと飛躍する」という監督の意図に反しラストが無断でカットされた作品。主人公がジャズ歌手を夢見るという設定を生かし、ジャズ的でもある不協和音の曲が中心になっている。
©1964松竹株式会社
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『乱れ雲(107分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1967年
監督:成瀬巳喜男
出演:加山雄三、司葉子、草笛光子、浜美枝、加東大介、森光子、土屋嘉男、浦辺粂子
夫を交通事故で亡くした妻が加害者と愛し合うようになり、複雑な思いと苦しみの末に訪れる結末に胸が痛くなるメロドラマの傑作。憧れていたという成瀬の遺作の音楽を担当することになった武満は、バンドネオンの揺れ動く音色で二人の哀しみと抒情を表現した。
©1967松竹株式会社
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『からみ合い(108分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1962年
監督:小林正樹
出演:山村聰、渡辺美佐子、藤井純一 千秋実、岸惠子、宮口精二、仲代達矢、滝沢修、信欣三、 鶴丸睦彦、浜村純、千石規子、菅井きん、北原文枝、川津祐介、 蜷川幸雄、佐藤慶
三億円の遺産を巡り、弁護士、若き妻とその愛人、秘書らが騙し合い、からみ合うサスペンス。悪人揃いの登場人物、巧妙な脚本とドライな演出は、まさに日本のフィルム・ノワール。小林正樹と武満徹コンビの第一作で、これ以後の小林作品の音楽はすべて武満が担当することになる。犯罪の香りにぴったりのモダンジャズが流れるタイトルバックが超クール!
©1962松竹株式会社
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『自動車泥棒(99分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1964年
監督:和田嘉訓
出演:安岡力也、デビィ・シェス(真理アンヌ)、寺田農、フランツ・フリーデル、上岡肇、勝見守利、関本太郎、森田則之、田沢幸男、マイク・ピアス、小林リンダ、原田直美、メリー・ピアス、西村エオルド、中島めぐみ、関時子、城アキラ、石神正己、細川ちか子、宮田芳子、森今日子、田中淳一、B・ハッサム、上田吉二郎、平野威馬雄、武智豊子
混血児の“酋長”は、盗んだ部品で作った自動車で仲間と孤児院を出る。ラストのカラーパート、ダンスシーンの挿入など、斬新な手法が光る和田監督のデビュー作。メキシコやアフリカ風のダンス音楽、ジャズ、歌謡曲、軍歌など多彩な音楽を使い、猥雑な中にも哀切な青春を表現した武満の音楽が素晴らしく、映画音楽の代表作のひとつといえる。
©TOHO CO.,LTD
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『あこがれ(85分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1966年
監督:恩地日出夫
出演:内藤洋子、田村亮、新珠三千代、乙羽信子、小沢昭一、加東大介、林寛子、沢村貞子、沢井正延、小夜福子、賀原夏子
同じ養護施設で育った少年と少女の恋の行方を切なくも爽やかに描いた作品。不幸な身の上の少女を演じた内藤洋子の健気さが際立つ。武満は抒情的なメインテーマを作り、その変奏が作品を貫いている。武満のメロディメーカーとしての才能が遺憾なく発揮されている。
©TOHO CO.,LTD
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『青幻記 遠い日の母は美しく(117分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1973年
監督:成島東一郎
出演:田村高廣、賀来敦子、伊藤雄之助、山岡久乃、戸浦六宏、小松方正、藤原釜足、殿山泰司、浜村純
沖永良部島を舞台にした小説の映画化。36年ぶりに帰郷した男が死んだ母との思い出を回想する。名カメラマンの成島が配給も決まらないまま自主プロダクションで製作し、初監督とは思えない繊細さが高い評価を受けた。幻想的かつ抒情的な映像を際立たせる武満の主題とその展開が評価され、毎日映画コンクール音楽賞を受賞した。
資料提供:成島鋭彦
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『火まつり(125分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1985年
監督:柳町光男
出演:北大路欣也、太地喜和子、宮下順子、三木のり平
1985年に熊野市二木島で実際にあった事件をモデルに、自然と人間、土着的な神話と現実を見事に融合させて描いた、柳町映画と中上文学の到達点。柳町の作品を高く評価していたという武満は、アンサンブルに民族楽器や鳥笛を重ね合わせ、熊野の自然と人間の交感の官能性を浮かび上がらせた。
©1985KADOKAWA
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『女体(95分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1964年
監督:恩地日出夫
出演:団令子、楠侑子、千之赫子、岩崎豊子、坂本スミ子、稲垣昭三、南原宏治
『肉体の門』『埴輪の女』をもとに、悲惨な戦後と現在の幸福な生活のギャップに戸惑う女の心理の揺れを描いた恩地日出夫の野心作。武満はタンゴを思わせるバンドネオンによるメロディアスな曲と、高音域の弦による不穏な音を使い、揺れ動く女の情念を巧みに表現している。
©TOHO CO.,LTD
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『最後の審判(96分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1965年
監督:堀川弘通
出演:仲代達矢、須賀不二男、淡島千景、吉村実子、松村達雄、伴淳三郎、東野英治郎
マッギヴァーンの原作の映画化。従兄弟の妻との不倫の果てに、彼女の夫を罪に陥れようとする仲代の最後の哄笑を聞け! 淡島との激しく艶めかしい情事、雨の中での抱擁の演出が素晴らしい。武満にとって堀川監督との2作目の作品で、犯罪映画らしいメロディーの曲に加え、喫茶店などで流れるジャズ風の曲も武満の作曲によるもの。
©1965東宝
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『めぐりあい(92分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1968年
監督:恩地日出夫
出演:黒沢年男、酒井和歌子、桑山正一、菅井きん、黒沢博、工藤富子、森光子、池田秀一、有島一郎、進千賀子、田村亮、赤木春恵
生活や家族のため黙々と働く工員の努と店員の典子の恋は、度重なる不運の波に押し流される。野に咲く花のようなヒロイン酒井和歌子が光輝く青春映画の佳作。何といっても主題歌『めぐり逢い』が有名だが、武満の「荒木一郎が作詞と歌を引き受ければ」という希望を荒木が引き受けて実現したものである。
©1968東宝
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『日本の青春(129分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1968年
監督:小林正樹
出演:藤田まこと、新珠三千代、黒沢年男、酒井和歌子、田中邦衛、奈良岡朋子、佐藤慶
戦争の傷を引きずる父と防衛大志望の息子の関係を軸に、戦争とは青春とは何かを問う遠藤周作原作の映画化。元上官への怨念や新珠への想いを細やかに演じた藤田の演技が素晴らしい傑作。武満は、戦中派の父と戦後派の子を表現するように、哀愁を帯びた曲と重く鋭い曲の二つのテーマ曲を作り作品を盛り上げた。
©1968東宝
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『弾痕(94分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1969年
監督:森谷司郎
出演:加山雄三、太地喜和子、佐藤慶、岡田英次、立花マリ、納谷悟朗、小沢忠臣、岸田森
日系二世でCIAの活動員・加山雄三は、亡命中国人(岸田森)をめぐる米中の諜報戦の渦中にいたが…。安保粉砕の声と共に米軍基地に突入する若者の姿を見て、自分とは何者かを見出していく殺人兵器を加山雄三が熱演。日本的要素を排した武満の音楽がスマートでクール。挿入歌『死んだ男の残したものは』も印象的。
©TOHO CO.,LTD
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『おとし穴(95分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1962年
監督:勅使河原宏
出演:井川比佐志、宮原カズオ、大宮貫一、田中邦衛、矢野宣、佐々木すみ江、松尾茂、観世栄夫、佐藤慶、金内喜久夫、松本平九郎、奈良あけみ、袋正、島田屯
勅使河原が安部公房と初めて組んだ初長編。炭鉱、貧困、瓜二つの男、白いスーツの殺し屋、廃集落に残された女、それらを眺めている幽霊。粟津潔によるタイトルと前衛的でシュールな映像、武満徹、高橋悠治、一柳慧によるプリペイドピアノとチェンバロの音色が不穏な空気を醸し出し、映画全体がまるで悪夢のような様相を見せる亡霊の映画。
©1962草月会
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『砂の女(147分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1964年
監督:勅使河原宏
出演:岡田英次、三井弘次、岸田今日子、伊藤弘子、矢野宣、関口銀三、市原清彦
砂丘に昆虫採集に来た教師自身が砂に囚われ逃げられなくなる。寄生する生物のような砂の恐さと美しさと岸田今日子の官能性で、国内のみならずカンヌで審査員特別賞受賞、アカデミー賞監督賞&外国語映画賞にノミネート、さらにゴダールやスコセッシを熱狂させた勅使河の最高傑作。武満は管弦楽に電子処理を加えて異様な音を響きわたらせた。前衛音楽も映画音楽だと受け入れられると武満は語っている。
©1964草月会
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『他人の顔(122分/35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1966年
監督:勅使河原宏
出演:仲代達矢、京マチ子、平幹二朗、岸田今日子、入江美樹、岡田英次、市原悦子、矢野宣
安部公房・武満徹・粟津潔に加え美術に磯崎新を迎え日本のアートが結集した傑作。ベルイマン『ペルソナ』やフランジュ『顔のない眼』に並ぶ顔と自己同一性をめぐる物語。終盤のっぺらぼう人間の大群が押し寄せてくるシーンの強烈なインパクトを見よ。オープニングやビアホールで前田美波里が歌うワルツが有名だが、主人公の心情を表現する電子音も効いている。
©1966草月会
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『白い朝(29分/デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1965年
監督:勅使河原宏
出演:入江美樹、長谷川照子、松下洋子
4ヵ国合作映画の日本編監督に選ばれた勅使河原、武満徹、安部公房、写真家の石元泰博、栗津潔と豪華メンバー。パン工場で働くアコをトップモデルの入江美樹が演じる"労働者の休日"映画。休日を楽しむ若者たちの姿にパン工場での労働が挿入され、街のノイズなどもコラージュされる。クローズアップの多様とカット割りの多さ、音楽と音の使い方が前衛的だが、八木正生が奏でる静謐さを称えるテーマ曲が素晴らしい。【併映:『氣 BREATHING』】
©1965草月会
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『京(38分/デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1968年
監督:市川崑/監修:丹下健三、亀倉雄策、石川忠/ナレーター:芥川比呂志
町屋、禅寺、石庭、祇園祭、舞子など京都の四季を1年半かけて撮影した、市川崑の最も美しい作品のひとつ。すでに市川崑と何本か組んでいた武満は自らアイディアを出したといい、弦楽アンサンブルや和楽器によるアブストラクトな音楽がモダンな画面をより引き締めている。【併映:『熱海ブルース』】
©NTTデータ ルウィーブ株式会社
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『氣 BREATHING(30分/デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1980年
監督:松本俊夫/舞踏:堀内博子
磯崎新がプロデュースしたパリでの展覧会で上映するため、「間」をテーマに依頼された作品。空、海、石仏、そして舞踏をナレーションなし、30分わずか22カットという大胆な構成で撮った実験映画。監督から強く依頼された武満は、能の謡や尺八などの音色を音響加工し自然の力を喚起させる手法を用いた。【併映:『白い朝』】
©Shibata Film Promotion
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『熱海ブルース(20分/デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1962年
監督:ドナルド・リチー
出演:ワダ・チエコ、スズキ・トモスケ
小津や溝口の研究者として知られるドナルド・リチーにより2日間で撮られた作品。熱海の海沿いの温泉街で出会った男女の行きずりの恋を描いた作品。全篇にわたる武満のジャズ・カルテットによる影響もあり、熱海がフランスの海沿いのリゾート地のようにも見えてくる。武満のジャズ時代を象徴するような愛すべき小品。【併映:『京』】
協力・資料提供:PETER M. GRILLI
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〒150-0044
東京都渋谷区円山町1‐5
KINOHAUS(キノハウス) 4F
03-3461-7703
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