近日上映予定
追悼特集 西村昭五郎を再評価する!
2018/01/20 ~ 2018/02/02
西村昭五郎
1930年、滋賀県生まれ。京大仏文科を卒業後、従兄の吉村公三郎の紹介で日活に入社、中平康などの下で助監督を務めた。デビュー作『競輪上人行状記』は高い評価を受けたが興行面で惨敗し、企画を選り好みしたこともあって三年に渡って作品が撮れなかった。その後は何でも引き受けたがヒット作がなく、60年代終盤からはテレビの演出が多くなっていった。
1971年、成人映画路線に転向した日活から多くの映画人が去っていくなか、誰もが尻込みした第一作を引き受けたのが西村であり、『団地妻 昼下りの情事』はロマンポルノの定型を作った歴史的作品となった。西村がメガホンをとったロマンポルノは最多の84作品にのぼり、生涯にほぼ100本の映画作品を撮りあげた。晩年は映画界から離れていたが、最期までダンディズムを貫いた生涯だったという。2017年8月没。享年87歳。
性描写が達者で数をこなす職人と評されることが多い西村だが、それは「会社の要請で撮っている」ことを強調した自身の衒いとダンディズムのせいでもあろう。しかし、処女作から顕著だった人間観察の果てのニヒリズムとなげやりにも似たアナーキズム、独特のダンディズムは“職人として撮った”膨大なフィルモグラフィの中にも生き続けている。本特集ではカルト作として名高い『花を喰う蟲』を含む一般作からロマンポルノまでを上映し、西村昭五郎の作家性を問う。
※特別上映『肉体の門』は入替制一本立て上映・料金1100円均一。
※1/27(土)12:55トーク付特別上映『団地妻 昼下りの情事』(ゲスト:白川和子さん、聞き手:轟夕起夫さん)、
1/28(日)11:00トーク付特別上映『希望ヶ丘夫婦戦争』(ゲスト:片桐夕子さん、聞き手:上野昂志さん)の料金は1500円均一。チケットお持ちの方はトーク後の上映もご覧いただけます。
※1/29(月)~2/2(金)は女性専用席あり。
上映予定作品一覧(全14本)
『帰ってきた狼』
『花を喰う蟲』
『東京市街戦』
『やくざ番外地』
『刺客列伝』
『団地妻 昼下りの情事』
『新・団地妻 売春グループ13号館』
『色情妻 肉の誘惑』
『「妻たちの午後は」より 官能の檻』
『希望ヶ丘夫婦戦争』
『東京エロス千夜一夜』
『紅夜夢』
『肉体の門』
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『競輪上人行状記(35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1963年
監督:西村昭五郎
出演:小沢昭一、伊藤アイコ、南田洋子、加藤嘉、渡辺美佐子、高原駿雄、高橋昌也
犬の葬式と肉の転売で稼ぐ実家の寺を継いだ世間知らずの中学教師・小沢昭一が、悲惨な現実から逃避するように競輪にハマったあげく辿りついた境地とは!? 救いのない人間の業と底なしの無常観、そこからの力業の反転が観る者を圧倒する西村昭五郎の処女作にして最高傑作。
©日活
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『帰ってきた狼(デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1966年
監督:西村昭五郎
出演:山内賢、ジュディ・オング、鍵山順一、小沢栄太郎、高品格、健サンダース
夏休みを別荘で過ごす内気な受験生とワガママなお嬢様、そして実業家を刺した混血の青年。湘南を舞台に三人が過ごしたひと夏を描いた青春映画の傑作。海、ヨット、不良たち、幼い恋と嫉妬…。二度と戻らない青春の喪失感を刻んだ倉本聰と明田貢の脚本、考え抜かれた構図が素晴らしい!
©日活
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『花を喰う蟲(デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1967年
監督:西村昭五郎
出演:二谷英明、太地喜和子、郷鍈治、月丘千秋、梶芽衣子、小高雄二、花ノ本寿、清水将夫
香本は偶然出会った不良少女の奈美をモデルに仕立て上げ、政財界のお偉方への貢ぎ物にするが…。虚無感を抱えた謎の男と道具として利用される女、二人が堕ちていく様をスタイリッシュすぎる映像で描くカルト作が遂に登場! 『殺しの烙印』との二本立てが伝説的不入りとなり、清順がクビになるきっかけともなった一作。
©日活
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『東京市街戦(35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1967年
監督:西村昭五郎
出演:渡哲也、松原智恵子、宍戸錠、藤竜也、小池朝雄、佐々木孝丸
闇マーケットをめぐり、渡哲也率いる愚連隊と“三国人”が衝突し…。抑圧を解かれ狂暴化した男たちと死に損なった男たちが戦後の瓦礫の中で殺し合うクライマックスは、もはやヤクザ映画を超え戦争映画の域に。小池朝雄のキレっぷりも凄い東映実録路線を思わせる一本。
©日活
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『やくざ番外地(35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1969年
監督:西村昭五郎
出演:丹波哲郎、山本陽子、長谷川明男、佐藤慶、小畠絹子、郷鍈治、岡崎二朗
多摩を縄張りとする高瀬組をつぶすため送り込まれた村木は…。かつて盃を交わした兄弟分への人情と組長への義理の間で悩む中間管理職の丹波先生が観られるレア作品。善玉やくざの佐藤慶、妹の山本陽子に加え、高宮敬二と小畠絹子という元新東宝組が出演しているのも異色。
©日活
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『刺客列伝(35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1969年
監督:西村昭五郎
出演:高橋英樹、南利明、大辻伺郎、井上昭文、郷鍈治、川地民夫、宍戸錠、松原智恵子
昭和初期。石切場を仕切る松田一家に雇われた用心棒たちは、人足たちへの残虐なやり口に嫌気がさし…。着流しの高橋英樹、拳銃使いの宍戸錠、盲の槍使い大辻伺郎ら個性的な七人が非道な組長と悪徳軍人相手に命をかける! 仁侠ミーツ西部劇の異色アクション。
©日活
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『団地妻 昼下りの情事(35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1971年
監督:西村昭五郎
出演:白川和子、浜口竜哉、南条マキ、関戸純方、美田陽子、前野霜一郎、大泉隆二、小泉郁之助
欲求不満の団地妻が隣の奥さんを通じて売春組織に入るが…。昭和な小道具やビビッドな色彩が楽しい手堅い作品と思いきや、アメリカン・ニューシネマかゴダールかという衝撃のラストが待っている。誰も知らなかった“ロマンポルノ”を作り上げた西村と白川和子による歴史的一作。
©日活
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『新・団地妻 売春グループ13号館(35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1975年
監督:西村昭五郎
出演:珠瑠美、影山英俊、丹古母鬼馬二、芹明香、森みどり、室京子
まもなく夫が待つドイツへ出発する妻が出来心で義弟と関係を持ち…。団地妻を売春組織に引き入れる隣人・丹古母鬼馬二に弱みを握られ、あれよあれよという間に堕ちていく人妻の三ヶ月間の地獄めぐり。衝撃的かつ行き過ぎて逆に笑えるラストの展開はまさに西村テイスト。芹明香も丹古母の妻役で出演している。
©日活
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『色情妻 肉の誘惑(デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1976年
監督:西村昭五郎
出演:松永てるほ、渡辺とく子、水城ゆう、坂本長利、影山英俊、山田克朗、丹古母鬼馬二
セックスレスで悶々とする検事夫人が、不気味な占い老婆から「すぐにセックスしないと死ぬ」と予言され…。「ファック!」と繰り返すオウム、断続的に襲う性的幻想、黒魔術的儀式等のシュールで不気味な雰囲気が横溢する異色のオカルト・ミステリー・ポルノ。
©日活
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『「妻たちの午後は」より 官能の檻(35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1976年
監督:西村昭五郎
出演:宮下順子、北斗レミカ、渡辺外久子、古川義範、山田克朗、織田俊彦、花上晃、島村謙次
自殺したはずの男に抱かれる女、妻が情事にふける部屋を眺める夫、公園のブランコ、ネズミの眼…。今とは違うもう一人の自分を取り戻すように不倫を繰り返す男女を描く。虚構と現実のあわいを描く田中陽造の脚本と姫田真佐久による映像が素晴らしい傑作。
©日活
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『希望ヶ丘夫婦戦争(デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1979年
監督:西村昭五郎
出演:片桐夕子、山口美也子、八城夏子、本郷淳、浜村砂里、青空はるお、三谷昇、矢崎滋、大江徹、島村謙次、坂本長利、八代康二、茜ゆう子、ちばくみ子
妻に家庭とベッドの主導権を握られることを恐れる夫のジタバタを描いた傑作コメディ・ポルノ。古い感性の中年夫とハイテンションの若妻の家庭内世代間格差を描いた実相寺昭雄原作の映画化作品で、夫が誘われて入会するオナニーサークルには爆笑必至。
©日活
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『東京エロス千夜一夜(35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1979年
監督:西村昭五郎
出演:志麻いづみ、芽樹あやこ、宮井えりな、小松方正、橘雪子、丹古母鬼馬二
父・荒木甚五郎(アラジン)と後妻の夜の営みを覗いて悶々とする進藤発人(シンドバッド)は、迷い込んだ異世界で女性たちと次々に関係し…。東大四浪中の童貞君の妄想世界を描いたコメディ。アマゾネス軍団まで登場するぶっ飛んだ展開、カッコいい音楽、ドライなテイストがイケている。
©日活
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『紅夜夢(デジタル)』
- 上映スケジュール
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公開:1983年
監督:西村昭五郎
出演:親王塚貴子、江崎和代、森村陽子、青山恭子、小林稔侍、名和宏
何度か映画化されている実在の悪女“高橋お伝”もので、天知茂が作ったアマチフィルムが製作に参加している。お伝役の親王塚貴子の演技力はイマイチながら、時代ものとしての完成度、小林稔侍と名和宏の出演など見どころ満載。最後に流れるナレーションの声に注目!
©日活
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『肉体の門(35mm)』
- 上映スケジュール
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公開:1977年
監督:西村昭五郎
出演:加山麗子、山口美也子、志麻いづみ、渡辺とく子、遠藤征慈、富田仲次郎、花上晃、大泉滉、岡本麗、森川麻美、工藤麻星、森みどり、桜井とも子、高橋明
終戦直後の東京、生きるためパンパンになった女たちのねぐらに一人の復員兵が迷い込んでくるが…。リンチや牛の屠殺シーンなどリアルな描写もさることながら、ヒロポン中毒になる肺病やみの娼婦を演じる渡辺とく子が凄い。同原作の他映画化作品に勝るとも劣らない秀作。
©日活
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